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「金融リテラシー」とは、経済的に自立し、より良い生活を送るために必要なお金に関する知識や判断力のことです。

金融リテラシーと聞くと難しく感じるかもしれませんが、私たちはこどもの頃からお金の使い方を学ぶ機会があります。例えば、おこづかいやお年玉をもらうときに「無駄づかいをしないように」「お金はよく考えて使いなさい」などと言われた人は多いのではないでしょうか。あるいは今、おこづかいをあげる立場になって、こどもたちに同じようなことを伝えている人も少なくないでしょう。

また、大人になるにつれて、一人暮らしや結婚といったライフイベント、思いがけない病気やトラブル、車や住宅など大きな額の出費やローン、保険契約、さらに投資や貯蓄といった様々な場面で、金融や経済に関する詳細な情報や知識に基づいた判断力が必要とされる機会が増えていきます。

そのような場面で適切に判断を行うためにも、金融リテラシーを育むことはとても重要なのです。

2「金融リテラシー」「金融経済教育」はなぜ必要?

金融リテラシーを身に付けるための教育が「金融経済教育」です。国民一人ひとりが、社会で生きていくために必要な金融やその背景となる経済についての基礎知識を高めていくことを目的としています。

近年は投資詐欺や悪徳商法といった昔ながらの詐欺のほか、SNSや偽メール、偽サイトを経由したフィッシング詐欺など手口も多様化し、低年齢の被害者も増えています。また、クレジットカード以外にも電子マネーなどの新たな決済手段のほか、暗号資産(仮想通貨)といったデジタル通貨も普及し、実際に現金を扱わないままお金のやりとりができてしまうことなどから、金融リテラシーの必要性はより高まっています。

令和4年(2022年)から成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、保護者の同意がなくてもクレジットカードを作ったり、ローンが組めたりするようになったことなどから、高校の授業で金融経済教育が拡充されました。なお、同年に金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査」では、金融経済教育を受けたと認識している人の金融に関する設問の正答率は高く、金融経済教育の必要性と成果が表れています。

このように、金融リテラシーが高いと、
家計管理がしっかりしている。
計画を立ててお金を準備しているので、やりたいことを実現しやすい。
緊急時の備えがあるので、危機(自身のケガや病気、不景気による収入減など)に強い。
詐欺や多重債務などの金融トラブルにあうことが少ない。
経済的に自立し、より良い暮らしを送ることができる。
などの利点があるのです。

3最低限身に付けておきたい「金融リテラシー」

金融経済教育の在り方について検討を行っている金融庁の「金融経済教育研究会」では、4分野・15項目の「最低限身に付けるべき金融リテラシー」を次のように挙げています。

最低限身に付けるべき金融リテラシー

分野1. 家計管理

(1)適切な収支管理(赤字解消・黒字確保)を習慣にすること。

分野2. 生活設計

(2)ライフプラン(人生設計)を明確にすること。

分野3. 金融と経済の基礎知識と、金融商品を選ぶスキル

【金融取引の基本としての素養】

(3)契約をするとき、契約にかかる基本的な姿勢(契約書をよく読む、相手方や日付・金額・支払い条件などが明記されているかを確認、不明点があれば確認するなど)を習慣にすること。

(4)情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できるかどうかを必ず確認すること。

(5)インターネット取引の利点と注意点を理解すること。

【金融分野共通】

(6)金融と経済の基礎知識(単利・複利などの金利、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターンなど)や金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択について理解すること。

(7)取引の実質的なコスト(価格、手数料)について把握することの重要性を理解すること。

【保険商品】

(8)自分にとって保険でカバーしたい事態(死亡、病気、火災など)が何かを考えること。

(9)カバーすべき事態が起きたとき、必要になる金額を考えること。

【ローン・クレジット】

(10)住宅ローンを組む際の留意点を理解すること。

ア.無理のない借入限度額の設定、返済計画を立てることの重要性
イ.返済を難しくさせる事態に備えることの重要性

(11)無計画・無謀なカードローン・クレジットカードなどの利用を行わないことを習慣にすること。

【資産形成商品】

(12)高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことを理解すること。

(13)資産形成における分散(運用資産の分散、投資時期の分散)の効果を理解すること。

(14)資産形成における長期運用の効果を理解すること。

分野4. 外部の知見の適切な活用

(15)金融商品を利用するにあたり、外部の知見を適切に活用する必要性を理解すること。

以上のリテラシーを「使う」「備える」「貯める・増やす」「借りる」に分けて解説していきます。

使う 家計管理とライフプランニング

<項目(1)(2)に該当>

将来又は今後の人生をどのように送りたいのか構想することを「ライフデザイン」と言います。将来の夢、将来やりたいことなど、それぞれのライフデザインのためにどのようにお金を準備し、使っていくのかを具体的に計画立てて考えることが「ライフプランニング」です。

ライフデザインが多様化している現在、費用の大きさや支出の順序にはもちろん個人差がありますが、「就職」「結婚」「出産」「教育」「住宅」「介護」「老後」といったライフイベントには大きな支出を伴うことが多く、一般的に「教育費」「住宅の購入費」「老後の生活費」は人生の三大費用と言われています。

また、一生を通じて「医療費」や万一のときの「緊急時の出費」といった支出が発生することがあります。特に老後の生活費については、高齢化・長寿化が急速に進む現代日本において考えておかなければならない費用です。そのため、ライフプランニングと資金の見える化が重要なのです。
金融庁ウェブサイトでは、ライフプランシミュレーションのツールが提供されていますので、一度試してみるのも良いでしょう。

備える 公的保険制度と民間保険

<項目(8)(9)に該当>

人生には、病気やケガ、火災や事故など、様々なリスクがあります。自分自身がケガや病気をすることもあれば、他人にケガや損害を負わせてしまう可能性もあります。このような様々なリスクに対して備えるために、公的保険制度である年金保険、医療保険、介護保険、労働保険などを利用し、公的保険制度でカバーされない部分は、生命保険や損害保険といった民間保険の検討などリスク管理をする必要があります。
各種保険制度を理解し、自身のライフプランに合わせた保険制度を組み合わせ、資産形成と共に備えていきましょう。

貯める・増やす 金融商品を活用した資産形成

<項目(12)から(15)に該当>

資産形成には「貯蓄」と「投資」の2つの方法があります。まずは家計管理をしっかり行い、貯蓄することが大切です。しかし、超低金利のもとでは、預貯金だけではなかなかお金は増えません。もちろん、生活費やすぐに必要になる可能性のある資金を「預貯金」の形で持っておくことは、とても重要です。一方で、当面使う予定がない資金は、少額からでも株式、債券、投資信託といった金融商品に代表される「投資」の形で持つことも検討しましょう。

なお、金融商品には安全性、収益性、流動性といった3つの特性があります。この3つの特性全てが優れている金融商品はないため、それぞれの特性をよく理解し、自分の資産やライフプラン、目的にあった金融商品を選ぶことが重要です。
また、個々の金融商品の特性やリスク、また取引に係る手数料から、国内外の経済社会情勢などの幅広い知識まで、具体的かつ多角的な情報を収集し、慎重に検討した上で、適切な契約内容であることも確認して金融商品を選ぶ必要があります。

資産形成の方法は、預貯金や金融商品だけではありません。収入を増やすことも必要です。外国語を習得したり、PCスキルを身に付けたり、資格を取得したりするなど自己投資を行うことで、稼ぐ力を高めることも大切です。資産形成のみならず、自己投資も大切なのです。

金融庁ウェブサイトでは、資産運用シミュレーショが提供されていますので、一度、試してみるのも良いでしょう。

借りる リボ払いや分割払い、ローンなど

<項目(10)(11)に該当>

モノやサービスを購入する際は、「お金を借りて、買う」こともできます。一般的に車や住宅など、大きな買い物をするときのローンなどが該当します。また、分割払いやリボ払い、クレジットカードでの支払いも「後払い」となり、短期的に「お金を借りて、買う」こととなります。
お金を借りると、一般的には利子(金利)が発生するほか、手数料(実質的には金利)がかかる場合もあり、返すときには借りた金額よりも多く支払うことになります。

そのため借りる際には、いくらまでなら返せるのか(借入限度額)、どのように返していくのか(返済計画)を検討する必要があります。また、失業や病気、思いもよらないアクシデントなど、返済が難しくなるような事態に備えておくことも求められます。

4こんな金融トラブルにご注意を

かつては、本来の価値に見合わないものを高額で売りつける悪徳商法や、小さなリスクで大きく儲かるといった投資詐欺などが多くありましたが、昨今ではSNSなどを利用した暗号資産の取引や投資を持ち掛ける詐欺や、偽メールや偽サイトによるフィッシング詐欺や架空請求詐欺など、金融トラブルの手口は多種多様化しています。

特に、独立行政法人国民生活センターの発表によると、成年年齢が18歳に引き下げられた令和4年(2022年)10月末時点には、契約当事者が18歳、19歳の相談の件数が5,000件を超えました。成年になりたての人やその保護者は十分な注意が必要です。

どのような金融トラブルがあるのかを知る。それも金融リテラシー向上のための方法の一つです。

◎金融トラブルの相談窓口「消費者ホットライン」 188(いやや)

5各年代で身に付けたい「金融リテラシー」は?

学生、社会人、高齢者の各段階で効率的・効果的に金融リテラシーを身に付けていくために、金融経済教育推進会議では、年齢層別・分野別の教育内容について体系的かつ具体的に取りまとめた「金融リテラシー・マップ」を公表しています。

年齢別・分野別の教育内容

年齢別 習得すべき内容
小学生 買い物、おこづかい、お年玉、手伝いなどの体験を通じて、お金に関わる経験・知識・技能を身に付け、社会の中で生きていく力の素地を身に付ける。
(例)

  • おこづかい帳をつける。
  • 商品の選び方を知り、工夫して買い物ができるようにする。
  • 貯蓄の意義を理解し、計画的に貯蓄する習慣を身に付ける。
中学生 おこづかいの管理や買い物の経験も増え、家計や生活設計について理解し、将来の自立に向けた基本的な力を養う。
(例)

  • 家計の収入・支出について理解を深める。
  • 職業体験などを通じて、勤労を実感し、就きたい職業について考え、情報を収集する。
高校生 生活設計の重要性や社会的責任について理解し、社会人として自立するための基礎的な能力を養う。
(例)

  • 長期的な資金管理の大切さを理解する。
  • 進路選択などを通じて、意思決定の重要性を理解する。
大学生 社会人として自立するための能力を確立する。
(例)

  • 仕送りなどの収入と学費、生活費などの支出を把握する。
  • クレジットカードを利用する場合、借金であることを理解し、支払い可能な範囲で利用する。
  • 金融商品のリスクとリターンについて理解する。
  • 卒業後のライフプランを具体的に描く。
  • 職業選択に必要な能力開発・資格取得する。
  • 基本的な金融商品の仕組みや特性を理解する。
若年社会人 生活面・経済面で自立する。
(例)

  • 給与のうち、一定額を天引きする方法で預金を行うなどの工夫も行い、貯蓄行動を定着させる。
  • 収入のうちの手取り額と生活費などの支出を把握する。
  • 公的年金・保険の内容を把握し、必要に応じて貯蓄や民間の保険・年金への加入などを考える。
  • キャリア計画を立て、必要な自己啓発を行う。
  • 様々な金融商品の性質を理解し、運用する。
  • 金融商品の利用には、外部の知見を適切に活用する必要があることを理解する。
一般社会人 社会人として自立し、本格的な責任を担う。
(例)

  • 住宅購入やこどもの進学などのライフイベントについて必要な知識やノウハウを習得し、資金管理を行う(必要に応じ住宅ローンなどの負債も計画的・有効に利用できる。)。
  • 死亡や疾病、火災など不測・緊急の事態を想定し、貯蓄、保険加入などを適切に行う。
  • 収支の改善に努め、黒字を確保し、貯蓄や投資を通じて将来に向けた資産形成を行う。
高齢者 終身にわたる資産管理をする。
(例)

  • 年金受給額などの範囲内で支出を行えるライフスタイルに切り替える。
  • 判断力や理解力が衰えた場合に備え、資産の管理・運用の準備を行う。

まとめ

金融・経済をめぐる環境は、時代によって大きく変化していきます。様々な金融商品や金融サービスが続々と生まれ、そうした変化に取り残されないよう、社会人になってからも常に新しい情報を得て、金融リテラシーを高めることが重要です。そのためには、金融機関や業界団体、地方自治体などが行っている金融セミナーや公開講座などを利用することも有効な手段のひとつです。なお、セミナーなどの主催者情報はきちんと確認した上で、利用するように気を付けましょう。

金融庁においては「高校生のための金融リテラシー講座」を実施しています。高校に出張講座を行うほか、講座で使用する分かりやすい資料を金融庁ウェブサイトで公開しています。

また、金融広報中央委員会のウェブサイト「知るぽると」では、金融リテラシーの向上に役立つ様々な情報が提供されています。
※金融広報中央委員会は、都道府県金融広報委員会、政府、日本銀行、地方公共団体、民間団体などが協力し、中立・公正な立場から暮らしに身近な金融に関する広報活動を行っている団体です。

 

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